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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)2663号 判決 1980年10月30日

原告

吉松敏宏

被告

右代表者法務大臣

奥野誠亮

右指定代理人

東松文雄

外一名

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一公社総裁が製造たばこを一手に製造、販売していることは、当事者間に争いがない。

二原告は、公社総裁の右行為が公権力の行使に当たり、違法であるから、国家賠償法一条一項に基づき、被告に損害賠償を請求する旨主張するので検討する。

1  製造たばこの製造、販売等の権能は、国に専属し、日本専売公社法の定めるところにより、公社が右権能を行使するものである(たばこ専売法二条、三条)ところ、製造たばこは、いわゆる私的財に当たり、国が財政上その他の理由から、専売権を保有するものにすぎなく、その製造、販売の事業自体は、その実質において私人のなす事業と異なるところなく、その法律上の性質に差異がない。したがつて、右専売権の実施に当たり、特に法律が公社に付与した権限の行使につき、国家賠償法一条一項の適用があるのは格別、公社総裁による製造たばこの製造、販売行為自体は、同条項所定の「公権力の行使」に当たらず、これにより他人に不法行為をしたときは、民法上の賠償責任を負担するにとどまるものと解するのが相当である。

2  そうだとすれば、その余の点について判断を加えるまでもなく、原告の主張は採用できない。

三以上のとおり、本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(伊藤博)

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